『世界一キライなあなたに』 ~ラストのエド・シーランはずるい~
『世界一キライなあなたに』(2016 米・英)
|
【あらすじ】
イギリスの田舎町に住むおしゃれが大好きな主人公のルーは家計を支えるために、半年契約の介護仕事に就くことになります。介護するのは元実業家で大富豪の青年ウィル。ウィルは2年前にバイクにはねられ、脊髄に重度の損傷を負い四肢麻痺となった経緯があり、ただ生きているだけの無気力な日々を過ごしていました。自分の殻に閉じこもり、冷淡にふるまうウィルに、ルーは心が折れそうになりますが、ある日を境に二人は意気投合し、距離を縮めていきます。お互いに好意を抱く二人でしたが、ある日、ルーはウィルが「生きる時間」を残り半年と決めていることを知ってしまいます。
どうにかウィルに生きてほしいルーはあの手この手でウィルに生きる楽しみを感じてもらおうと奔走します。
「過去の素晴らしい自分」と、「すべてがままならない今の自分」に苦しむウィルの心情がつらい……! 正常に働く頭を持つ分、つらさは計り知れません。夢の中では過去の五体満足の体なのに、目が覚めるたびに現実を突きつけられ絶望する毎日。
……正直、ウィルが自ら死を望む気持ちも分からなくはないです。
障害を持ちながらも前向きに生ていける人もいますが、皆がみんな、前を向けるとは限りません。どれだけ周りに励まされても、その先にある何十年後を考えた時に、くじけずに生きていけるのか。何度立ち上がればいいのか。回復の見込みのない体で、何を目指したらいいのか。「生きること」がウイルにとって苦しみになってしまうんですね。
そんなウィルとは反対に主人公のルーはほとんどポジティブでぶち当たっていくタイプ。毎度毎度、少し独特ながらもおしゃれな着こなしで、観ているだけで楽しいし、明るい気分になります。困り眉に大きくニカッとと笑う顔が本当に可愛いです。
ルーの存在で、殻に閉じこもっていたウィルは徐々に変化していきます。髭をそり、髪を整え、外に出て、元カノの結婚式に出席して……。変化の様子に、観ている側も安堵やニヤニヤが止まりません。始めは互いに嫌悪していた二人が、次第に相手のことを理解し、気楽な友人になり、惹かれて、好きになる。 いい流れです(好き)。
ルーとの出会いで無機質な日々から、意味のある日々を過ごすようになるウィル。だからこそ自分の「生と死」を違う面から考えるようになり、その行きつく考えに愛を感じるのですが……。
ネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、ウィルのためにルーが奔走する一方通行の物語ではなく、ウィルがルーの「可能性」を示して背中を押して変えさせようとする物語でもあります。原題が『Me Befor You』というのですが、『あたなに出会う前の私』という意味だそう。出会った二人が徐々に影響されて変わっていく様子を示しているようで、この原題はしっくりきます。邦題の『世界一キライなあなたに』よりもこっちのほうがキンヨーは好きです。
きっと誰の目線に感情を置くかで、映画の賛否が分かれるんでしょうね。時間を空けて再度観た時に、違う人の目線で見たら面白いかもしれません。
【映画のおとも】
ワイン 甘口白 フォーティファイド 酒精強化ワイン フロラリス・モスカテル・オロ / トーレス スペイン カタルーニャ / 500ml 価格:2,420円 |
スペインワインの名門、トーレスの白ワイン フロラリス・モスカテル・オロ
エレガントな花の香りが広がる甘口の上品なワインです。
作中、ルーのワンピースやヘアアクセサリーにたびたび蝶々のモチーフが登場します(あと、ラストにも蝶々をモチーフにしたアイテムも出てくるので要チェック)。蝶々が似合う純粋で明るいルーは、花の香りがよく似合いそうです。甘いながらも、すっきり飲めるのでお勧めです。
エンディングで流れるエド・シーランの『Photograph』が映画にぴったりリンクしているんですよね~。ぜひぜひ、エンディングもじっくり楽しんでください~。